加茂町散策
1月9日 天気曇時々晴一時霧雨 愛猫裏メンバー2人
加茂町(木津川市)の浄瑠璃寺・岩船寺界隈を案内せよとの指令が下る。依頼人の目標は、今後いつでも(私の案内無しでも)、両寺の間を歩いて往来できるようになりたい、ただしそれぞれのお寺のアプローチはバスを使うとのこと。
ということで、今回は、当尾(とうの)散策と絡めて、近鉄奈良駅からJR加茂駅に至るルートを仕立てて臨んだ。
結果的に散策路付近については目的は果たしたが、いつもの藪をつつく系のプランニングのおかげで、むしろその前後が印象的な散歩になった。依頼人には一度ならずUターンさせたり、不安に陥れたりして申し訳ない。
第1課: 近鉄奈良から浄瑠璃寺
最初の目標は、浄瑠璃寺南口バス停。南口という名前にもかかわらず、地形図上はお寺正面に回り込んでいるようだが、それでもバス路線を歩くよりはずいぶん近いと計算。
なるべく幹線道路は通らないように、転害門から裏道に入り、川上町の信号でR369柳生街道に合流。
交通量が心配だったが、登りにかかる前は歩道が完備されているし、それ以降は中ノ川の分岐まで裏道が使えたため、R369に関しては問題なし。浄瑠璃寺・岩船寺に向かう府道33については歩道無しだが、交通量も無くなったので、結局浄瑠璃寺南口まで特に気にせず歩けた。
さてここから地形図で言う『軽車道』に入る。さすがに実線で描いてあるだけあって、クルマで踏み固められた確かな道で、地形図どおりに分岐もあって、ここまでは楽勝。
と思ったら、地形図で言う徒歩道、俗称『点線』に入ったとたん、牛舎だか豚舎だかで放し飼い?の犬十数頭に遭遇。やたら吠えられたが、とりあえず鼻でつつく(嗅ぐ?)以上の物理的攻撃はしてこないので、やるべき食べ物を持ってないことをアピールしつつ前進。
しかしいくらも進まないうちに、採石場?に行く手を阻まれる。さすがに採石場では、作業してなくても関係者以外は立ち入りづらい。地形図上の道は、事務所エリアを突っ切る方向に伸びているが、遠目に蛍光灯が点いている。仕事中だとしたらなおさら、これ以上進むのもとどまり続けるのも難しいと判断。
そもそも見知らぬ犬の大群が寄ってきた時点で普通のハイカーならびびる、というのは飼い主も容易に想像するであろうから、おそらくはここの道は通したくないという意図である公算が大きい。ということで、犬の群れにもまれながら元の道に戻る。結局同伴者に無駄にコワい思いをさせただけに終わった。
というわけで、最初の目的地を目前にして金縛りに遭う。これは困った。
課外: 浄瑠璃寺南口を検証する
果たして『浄瑠璃寺南口』は、本当に浄瑠璃寺の南口として機能しているのかどうか? 帰って調べてみた。本当は出かける前に調べるべきなのだが、あえて調べずに飛び込む性質なので、同伴者にはいい迷惑なのだ。
とりあえず、この道を通って浄瑠璃寺に行った人はいるらしい。というか、現地の案内図だと『水飲み地蔵』という水場つきの立派な参道のはずなんだけど!?
あと、採石場作業員に訊ねた方もおられるらしいが、答えが「行ける」「いや行けん」というレベルで、少なくとも「通ったらダメ」という姿勢ではなかったらしい。
で、実際に通ろうとしたら、コンディションが非常に悪く、結局諦めたとの報告もあり。
以上の調査結果により、非常に論理的な結論を導くと「今度逆方向から攻めてみるか」である(笑)。
第1課補習: 迂回して浄瑠璃寺
軽車道をr33に戻る。しばらく車道を歩くことになるので、車道合流前にお弁当を広げる。ストーブ出して、食材出して…チタン鍋がない!? しまった荷造りの時にいっぺんよけて入れ忘れたか!? いずれにしても、食料入手の最も期待できない場所に弁当なしで放り出されるのは大ピンチだ。ここはとにかく、浄瑠璃寺でも岩船寺でも、お昼のありつける場所に一刻も早くたどり着かなければならない。
…という決意とは裏腹に、ショートカットと称して入った山の中で足が動かなくなる。たまらず非常食(カロリーメイト)に手を出す。これでいよいよ後がなくなった、と思ったら、車道(r752)に合流する手前で、そういえばチタン鍋は防水袋に調味料と一緒に放り込んだような気がして確認すると、果たして出てきた(汗)。
というわけで、史上初、非常食を食べた後での弁当になだれ込む。きわめて体裁悪いが、非常食で頭に栄養が回ったおかげで、鍋のことを思い出したのだと思いたい。
本日のメニューは、冷凍ご飯と高菜入りちりめんじゃこ(出来合い)と玉子で雑炊。結果的には、ご飯を冷凍していてよかった。冷凍してなければ、ナベがないと思った時に高菜入りおにぎりにして食べていたはずで、そしたらナベが出てきた時のショックは計り知れないものであっただろう。
話は前後するが、ショートカットということにして、その実ほとんど己の趣味で入った徒歩道、こちらは地形図どおりにr752に出ることはできたが、地形図に載ってない分岐と合流が1回ずつあって、それぞれの道がどこに行くのか非常に気になっている。とりあえず、地形図の点線をトレースできる自信のある方以外は、素直にr33→岩船寺口→r752の車道を歩くことをお薦めする。所要時間もおそらくそちらの方がかからない(笑)。
そう、浄瑠璃寺に行くつもりが、どういうわけか岩船寺口に来てしまっているのだ。ここは予定を変更して岩船寺→浄瑠璃寺の順番にするか? と一瞬考えたが、まさかこんなアクシデントが起こるとは思ってなかったから、浄瑠璃寺→加茂のルートは調べてなかったし、どちらも距離的に大差ないと思えた(最適なルートで回れば岩船寺→浄瑠璃寺の方がほんの少し短い、ことが判明したのは帰宅後)。それより大事なこととして、予定のコースは平気で変えるわりに、予定の目的地を変えるのはガマンできない性格だったりする。
ミロクの辻を通過して間もなく、その名の由来になった弥勒菩薩が彫られた岩が現れる。道はここで岩船寺に向かうr47と、石仏散策路に分かれる。さきほどの決意により、散策路を進むが、ほんの200mほど進んだところで、今度はそこから岩船寺に向かう徒歩道が分岐。そんなに岩船寺に誘いたいのか(そうか?)。
かまわずまっすぐ進むと、わらい仏・眠り仏が現れる。この辺の石仏って、正式名をあえて伏せてニックネームで売り出しているような気がするが、しかし見ようによっては、他の場所の阿弥陀さんもみんな笑っているような気がするんだけど??
わらい仏を過ぎて間もなく、みたび岩船寺に向かう、今度は階段が出現。おそらくこれが両寺を結ぶ最短の徒歩道であろう。
久しぶりに民家を見かけるようになったら、唐臼(カラス)の壺に出会う。単に『からうす』がなまっただけで、鳥類とは関係ないらしい。ただし、他の場所で『からす』とか『カラス』とかの案内標識を見かけたりすると、ちょっと自信がなくなるけど。
で、すぐ傍にある石仏が『からすの壺二尊』。ついに石仏自身ではなく近所の物を使って識別されてしまった(^^;。
それより、地形図に載っていないくせにやけにしっかりした道が南方向に伸びている。これもどこに出るのか気になるが、これだけしっかりした道でどこかに出るのなら、標識に行先のひとつも書いてあると思うので、やっぱりすぐ行き止まるのかもしれない。現地の案内図では『クワ地蔵』というのを通って浄瑠璃寺南の参道に繋がるらしいが…? 暇な時にまた来て確かめないと。
アタゴ灯籠で車道(r752)に合流、5分足らず歩いて浄瑠璃寺門前に到達。採石場から10分で来られるはずが、2時間半もかかってしまった(弁当の時間も含めて)。
第2課: 浄瑠璃寺→岩船寺
浄瑠璃寺は昨秋に入った、今回は両寺の道順が知りたいということで、門前でUターン。てっきり入るとばっかり思っていたのが拍子抜け。しかし、もし入っていたら、結果的に岩船寺には入れなかったことになる。
来た道を戻る途中、首切り地蔵まで200mの標識があったので寄ってみる。
消防屯所の裏にあるその正体は、地蔵ではなく阿弥陀さんであった。なぜに首切りかというと、あごの下がくびれて切れているように見えるからとか、処刑場にあったからとか言われているが、そんな案内を掲げているもんだから、明らかに大勢に首のあたりを触られているように見える。この分だと本当に切れるのは時間の問題かもしれない。
わらい仏近くの三叉路を岩船寺方面に曲がると、やたらでかい石を使ったワイルドな石段。これは人によっては厳しいかもしれない。
岩船寺奥の院は、ミロクの辻からの徒歩道に合流したところにある一願不動。不動さんなので、もしかしたら谷底まで下りるのかと思ったら、あまり下りないで助かった。
車道(r47)に再合流すると、まもなく岩船寺に到着。
この時点で15時過ぎ。閉門16時ということで、じっくり見学するにはギリギリの時間である。
こちら花の寺、とりわけアジサイで有名だが、わざわざこの時期にやってくると、本堂内の説明を貸切でやってくれるという利点がある。本堂内は撮影禁止につき文章にて説明すると、本尊は阿弥陀さん。なんでも平等院より古いとか、腕の太さで年代がわかるとか。周囲に鎌倉時代作の四天王があって(そういえば石仏めぐりの磨崖仏も鎌倉~室町初期の作だった)、堂内を一周すると、十二神将と、象に乗った弥勒さんと、三重塔を支えていた初代の?天邪鬼がいる。
シーズンを外してはいたが、門限まで境内を回ってしまった。ここから暗くなるまでに最悪でも麓までは下りなければならない。
第3課: 岩船寺→加茂駅
コミュニティバスの路線どおり、r47を通っていけばほぼ確実にたどり着けるが、ここは、やたらカーブの連続する車道を極力通らないショートカットルートを開拓する。
岩船区公民館から100mほど進めば、浄瑠璃寺への車道(r752)が分岐する。狙うショートカットは、ここから浄瑠璃寺方面に200mほど進んだ畑垣外集落から入る。ちょうど岩船観音寺跡からの山道が下りてくる所だが、後で調べたらこれもショートカットだった(汗)。
さて問題の道は、一応コンクリートは敷かれてあってちょっと安心したが、とりあえず地図に載ってない分岐が2箇所ぐらいあって焦る。こういう場合、道がなくなるより分かれる方が始末が悪い。極めつけが3方向の分岐で、見た目確かそうな、カーブミラーのある真ん中を選ぶ。カーブミラーがあるということは、少なくとも一時期は、ここを車両(軽トラ?)がかなりの高速で通っていたことを意味する。
路面はいよいよ土と落ち葉と木の枝に変わる。山を下りるほど怪しくなる道というのも珍しい。よく見たら、まだコンクリートの舗装は続いていて、それに土砂が積もったという道。その道が、ほとんど谷底に下りたところの廃畑でぷっつり途切れる。地形図の破線は、ここから沢の流れる方向に続いているのだが…? おそらく同じ地形図を見たであろう誰かが沢まで下りた形跡は認められる。私ももし単独だったら突っ込んだかもしれないが、初心者同伴で何メートル続くか見当がつかない道なき道を進むのは厳しい。
やむを得ず、日没が迫る中を300mほど、例の3分岐まで戻る。地形図の破線の道は、自信がないという意味に違いない!? 装備が不充分ならおとなしくr752まで戻っていたかもしれないが、ヘッドライトとGPSが生きていれば、仮に真っ暗になっても戻ることはできる、と、左の道に入る。こちらは舗装はないものの、軽自動車の轍跡がはっきりついた道である。しかし、元々の破線があてにならないとはいえ、空白の地域を歩くのは何とも心細い。
途中さらに分岐らしいものはあったが、先ほどの谷に下りる方向に進んでいくと、谷底まで直線距離で100mというところで、ついに左右から伸びる笹に行く手を阻まれる。少し進んで事態が回復しなければ、諦めてr752まで戻ろう、と思ったところで、眼下に現役の田んぼを発見。ということは、少なくとも人里まで行ける道があるということを示している。
とにかく、なんとしても田んぼまではたどり着く、と最後の気合いをいれた割にはそれほど障害なく、問題の沢に再び到達。で、田んぼの向こうに格段に立派な道を発見。しかも沢の上流に向かって伸びている。これはもしかして、さっき追い返された沢で少し頑張っていれば…とも思うがこれは結果論か。機会があれば、逆方向から攻めて確かめたいところ。なんにせよ、田んぼが見えるぐらい明るさが残っていて助かった。ヘッドライトだと足元は照らせても、田んぼは発見できない。
ということで、1回のミスコース?を代償に、山道の開拓には成功したが…南加茂台団地に向かう途中、西小~九体寺(=浄瑠璃寺)間の道路改修記念碑に出会う。ということは、ここから浄瑠璃寺は、かなり程度のいい道路なのかもしれない。やっぱり岩船寺→浄瑠璃寺の順番にしとけばよかったかも!?
あとは、南加茂台団地の東端を通り抜けて、加茂駅までまっすぐ。
まとめ
前節でちらっと書いたように、柳生街道から両寺を訪れて加茂に抜けるハイキングにあたっては、岩船寺→浄瑠璃寺の順番が望ましい。
本日のハイキングの最終版で見つけた浄瑠璃寺改修道路は、どうも墓地があるだけで見所は少ないみたい。やっぱり浄瑠璃寺からは、首切り地蔵からプラネタリウム方面に下りて、大門の最大級の石仏を拝むか、ノーマルに府道沿いの石仏群を拝みつつ下りるかのいずれかがおすすめルートになるだろうか。
しかし地形図に載ってない道がやたらあった。いつか歩き潰してみたいが、そうやって行ったら際限なく分岐が発生してどうしようもなくなるような気もする。