大苦戦! 初代Tシャツくん v. ベンチコート
昔、何も考えずにスーパーファイン紙にインクジェットでプリントしたやつを原稿として露光させ、シルクスクリーンが紙を切り取った形で丸ごと剥がれたという経験をして以来、Tシャツくんの原稿には『モノクロ専用OHPフィルム(エーワン27054)』にレーザプリントしたやつを使っている。油断していると忘れてしまっているが、Tシャツくんにとっての白黒は、見た目の色ではなく光(紫外線?)が通るかどうかで決まるのだ。で、初代Tシャツくんから見たら、インクジェット用のスーパーファイン紙程度に分厚い紙は全黒に見えるということ。
Tシャツくんが家庭用のツールである以上、インクジェットで原稿を作るというニーズは多いはずなので、ある時期から、原稿によって露光量を加減できる『インクジェット紙対応機』が登場したが、私はOHPフィルムを使うという対処法を編み出しているため、初代のままで充分使えている。
とにかくベースが透明だけに、剥がれるべきでない部分は、多少手荒く擦っても問題ない。おそらくピンホール修正液の出番は永久に来ないであろう。対して『黒』は、通常の紙に印刷した黒よりは光を通すものの、それで「ちょっと固化した」といった感じの、消しゴムのカスが出るような独特の剥がれ方をする。むしろ『白』がちょっとやそっとでは剥がれないことも手伝って、スクリーンを剥がす作業の効率は、OHPフィルムを使う方が断然高いと思う。メーカーは自前の用紙をラインナップしている立場上かどうか、この方法を公式にアナウンスしていないが、Tシャツくん愛用者の方はお試しいただきたい。まあそこらの紙に較べたら高価いが、それで作品の質が上がればどうってことのない差ではないか、と思う。
さて本題。
ほぼ1年ぶりにTシャツくんを使うことになったが、今回の対象は『ベンチコート4着』。納期は明日夕方。いや単に前日まで何もしなかっただけ(汗)。
シルクスクリーンである以上、固形面ならプリントできないものはない、つもりだったが、コートだけは斬れないのでござる…じゃなくてコートの柔らかさに大苦戦。
多少の想像力があればわかるであろうが、
- プリント面が柔らかいと、いくら圧力をかけて均しても、インク自体の圧力でプリント面を押し下げて、結果的に大量のインクが乗る
- プリント面に凹凸があると、本来インクが乗るべきでない領域までインクが滲んでしまう
- その状態で再度圧力をかけると、元々大量のインクが乗っていることも手伝って、原型をとどめないほどインクが広がってしまいアウト
- 同時にスクリーンの裏側にも大量のインクが付着して、それに気付かず次の1着にかかると、その時点でアウト
という全容を把握するのに、はじめの3着中2着で大失敗してインクを洗い流す(完全には落とせない)という手間を要した。
3着目の大失敗(&洗い流し)で、仮にここから失敗なしでいってもインクが足りない(1着あたりインクをバカ食いするため)ことを悟り、3、4着目は作業を放棄することにした。4着目は手をつけていないからいいが、3着目は単に汚しただけ(汗)。それより、1、2着目も2パーツに分けた1パーツ目しかプリントできていないので、こちらはもはや放棄も失敗も許されない。
一応これまでの失敗を活かして、どうにか大失敗だけは避けられて胸をなで下ろす。
まがりなりにもプリントできるコツ(と言うほどでもない)を会得した以上、3着目については、このまま薄汚れたまま使うよりは、何かプリントしているほうがいくらかマシなように思える。シルクスクリーンはまだ在庫しているし、インクも別の色ならまだある。ということで、表裏ともインクまみれで再利用する気の失せたスクリーンは廃棄して、今晩判を作り直し、明日早出して作業するという計画を即興で立てる。
ということで、Tシャツくんでベンチコートのような柔らかい面にプリントするにあたっての注意点を記しておく。
- シワはできる限り伸ばす
- 当然ながら、凹みがあるとインクが暴走する。四方から引っ張ってくれる助手2人(腕4本扱える助手なら1人でも可)がいればベスト。
- インクを擦り付けるのには相当の力をかける
- 可能な限りヘラで圧力をかけて、凹凸は作らないようにすること。滲み出さないように軽めに擦るよりは、思い切ってしっかり擦った方が経験上いい結果になる。
- 二度づけ厳禁
- 2回以上擦りつけるのは、非印刷領域へインクを押し広げる結果を招く。逆に1回限りなら、相当力を入れてもそんなに遠くまで広がることはない
- 大量のインクが乗るけどそんなもの
- 再度スクリーン越しにヘラを使ってインクをへずり取りたくなるが、今回のケースでは力を入れるほど大量にインクが乗るのでしかたない。むしろ↑のとおり不本意な結果になるおそれが強い。へずりたいならスクリーンを使わず、小ヘラで直接へずること。
- 多少滲むけどそんなもの
- プリント面の特性上致し方ない。とにかく動揺しないようにする。
- インクは惜しまない
- 想像以上に大量のインクを消費する。後でへずって回収するのはいいが、プリントの段階では、とにかく1回で確実に予定の全領域にインクを行き渡らせるのが重要。万が一インクを乗せきれなかった場合は、手作業で補修するしかない。↑で述べたとおり、スクリーン越しにヘラを2回以上使うのは厳禁。
- 連続プリントは、できれば2着まで
- おそらく3着目ぐらいには、スクリーンの非印刷面の裏側に、相当量のインクがついているであろう。拭き取るか洗い流すかして仕切り直す。もちろん、スクリーン裏側についたインクは、許容範囲かどうか都度チェックすること。
まあ、将来太陽精機さんが、これらの課題を画期的な方法で克服したその名も『ベンチコートくん』を作ってくれるまでは、個人の工夫で乗り切るしかない!? いやメーカーとは無関係な妄想なので混乱しないようにしてくださいね、って書いちゃうと、もし本当に頑張って開発してたら失礼だよねえ。